美味しい野菜とは 昔の野菜はこんな味がした - むかし野菜 佐藤茂行自然農園 佐藤茂行

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1.野菜の美味しさとは

「この野菜は美味しいね」と言ってもらえるには、只、甘いだけでどうでしょうか?
人間の味覚は、甘味・酸味・渋味・辛味・苦味の五味以外に歯ごたえ等の食感・ジューシーさ・香り等と料理の世界で言われる旨味を感じて美味しいと言っているのではないでしょうか。

★完熟野菜

これをもっと科学的に考えていくと、野菜は成長過程で土中の窒素分を吸収し、成長酵素(ミトコンドリア)の働きでその根・茎・葉・果実等に炭水化物とデンプンが蓄えられる。やがて土中に窒素分が少なくなると、ミトコンドリアが減退し完熟していく。完熟する際に、そのデンプン・炭水化物の一部が糖分とビタミンに変化する(植物は生き残ろうとして吸収できないデンプン等を分解させ、糖分に変える)従ってこの完熟野菜が美味しいと言われる。

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ミネラルの作用

さらに、野菜を含めて生命体は微量のかつバランスのとれた12元素のミネラル(鉄分・カルシューム・マンガン・マグネシューム・亜鉛等)が必要となるが、これらが不足した野菜達は不健康であり、味・香りともに薄く栄養価が低い。(岩塩や海の塩は単に塩辛いだけではなく甘さや旨味を感じるのはそれらのミネラル分によるものです)

化学肥料で作られた野菜

佐藤茂行自然農園 写真05昨今の農家は経済的合理性、つまり、野菜を早く・大きく・多く・虫食いもなく・均一に育てて出荷しなければ、市場はとってくれませんし、生活もできません。又、国や農協は量の確保ばかり口にし、それを実践させようとしています。そのため、化学肥料のやり方や農薬の使い方が農家の大命題となっております。
このことで農業者を責められません。(あらかじめ、お断りしておきます)それを前提にしてご説明いたしますと、化学肥料を多投しますと、水分も多く要ります。又、化学肥料でそだった野菜は葉や茎も薄くかつ香りも味も薄く虫にとっては大好物となります。(元来、味・香り・辛味等は野菜が虫から自分を守るために身に付けたもの)従って、大量の農薬を必要とします。

但し、有機野菜にも嫌になるほどうるさく虫はつきます。
野菜が健全に成長するためには、窒素・リン酸・カリが必要ですが(化学肥料と農薬はセットです)、特に成長という点については窒素が担っております。窒素を多く吸収すると野菜は急速に大きくなります。(化学肥料の大部分はこの窒素補給です)科学的に言いますと、窒素分が多く補給されると野菜には成長酵素(ミトコンドリア)が増殖し、急速に成長し続けます。
佐藤茂行自然農園 写真06化学肥料だと、土壌中に窒素分が切れることはなく、従って、成長途上で出荷されることになり、先に説明しました完熟できない野菜が市場に出荷されることなります。成長途上の野菜達は、デンプンや炭水化物がほとんどで、甘味は少なく、むしろ苦い味(デンプンの味)がすることもあります。
さらに人間も含めて野菜もデンプンや炭水化物をエネルギーに変える仕組みを持ち合わせておりません。従って、これらの野菜は栄養素としては吸収し難いと言うことになります。(糖質やビタミンは分子構造上、生命体は吸収しやすい)又、ミネラル分も少ない野菜は旨味も少ないだけではなく、昔の野菜と比較しても、栄養価と言う点では1/5以下に落ちております。

★ワンポイント

野菜にじっくり熱を加えると、デンプン等が分解し、甘さが増す効果がある。又、サツマイモやかぼちゃ等は一度太陽に当てたり、常温で寝かすと甘さが出てくる。
→野菜に火を通したり、油に絡めるのは吸収率を良くするためです。

★バーク及び牛糞堆肥を使用した有機野菜

以上の完熟野菜やミネラルを多く含んだ野菜という点では、標記野菜も化学肥料よりは改善されてはおりますが、元来これらの堆肥は窒素分が少なく(リン酸過多)どうしても多投し続けがちになりますので、化学肥料に似た効果になりやすい問題がある。

2.むかし野菜とは

佐藤茂行自然農園 写真07近代農法(化学肥料と農薬)や牛糞・バーク堆肥(低窒素のため多投する問題)を使用し続けると、土は固くなり塩基濃度(養分が濃過ぎた土壌)が増し、健全な野菜が育ちにくい問題が出てくる。私も様々に土作りや施肥方法を考えて実験してきましたが、美味しい野菜にはなりませんでした。そこで思いついたのは、昔(戦前・戦後)の野菜作りはどうしていたのか?と言うことでした。
戦前・戦後まもなくは各農家に必ず牛を飼っていました。そこでは牛糞(畜糞)がわずかと入会地や山林・田などから藁・草や葉を集めたり、人糞を肥溜めで腐らせて、堆肥として畑や田にやっておりました。しかも何代も続けて堆肥をやりつづけるため、土壌には計測不能な種類の微生物が棲んでおり、土はふかふかと肥えており、野菜の味も冒頭で述べた味・香りが豊かでしゃきしゃきとした食感があり、美味しい野菜の思い出がかすかに残っております。(私自身も農家ではなかったですが、小さい頃、畑に肥を運んでいた記憶と野菜の懐かしい味の記憶が残っております)

☆私の土作り☆

佐藤茂行自然農園 写真08大量の草(公園や河川敷の草)や葉のついた木の枝(剪定屑)を捨て場所に困っている園芸や造園士等の業者が、私の畑に持ってきます。それらを破砕したり選別し、葉や草を選り出します。(大きな枝は燃やし灰にして畑に戻します。ミネラル分が多く含まれている)近くの牛舎からおが屑の混じった牛糞を買い取り、それらの草や破砕屑と混ぜ合わせ、発酵させた堆肥を、野菜の植え替えの都度、(年に数回)畑に施肥します。

☆草・葉中心の植物性堆肥による土作り☆

◎植物性堆肥は完熟一歩前で畑に施肥する
その堆肥は窒素分が少ないかわりに、大量の微生物や放線菌(黴)や小虫が生きており、畑の中で残された有機物をめぐって微生物が増殖し、食物連鎖が起り、常に少量づつ窒素分を補給してくれます(土の中で発酵作用が長く継続して行われる状態)
  • このことによって、窒素分の継続補給効果が出ます(緩効肥料)
  • 特定の有害病源菌の発生が抑えられる(食物連鎖)
  • 自然の林や森の腐葉土のような土が形成される。(自然のリサイクル機能)
  • バランスのとれた微量のミネラルが効率良く土に残され続ける(海水に多く残されたミネラル分が雨となり地上に降り注ぎ、木や草の根から吸収される→植物性堆肥はそれらのミネラルが凝縮している)
◎農薬は一切使用できない
私の畑の土は小宇宙のように微生物達生命体の棲みかとなっており、微量な農薬でも彼等の一部を駆除することになり、食物連鎖を壊しかねませんので農薬が使用できないと言うことになります。
◎土作りは最低3年必要
早く思う土にしたくて、大量の堆肥を撒いてみましたが、無駄でした。昔の農夫は何代にも亘って土を作ってきたことを思い知らされましたし、人間のおごりを痛感させられました。3年経たなければ「金の土」にはなりません。
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☆私の美味しい野菜作りへのこだわり☆

美味しい野菜作りは毎日が勉強であり、思考錯誤の連続であります。
当園は露地栽培が基本であり、毎日が自然との語らいです。雨が降りそうになると畝作り(除草し、堆肥を撒き、貝殻・灰・石灰を降り、畑を起こす作業)をし、種を播く、日が照り続けると水やりをし、虫が発生すると虫取りをし、大風が吹きそうになると竹で添えをし、畑の見回りをしながら、野菜に声をかけて回る毎日です。
不思議なもので声懸けを怠った野菜は成長不良や死んでしまったりします。大雨や台風により畑が全滅することもしばしばですが、自然の力には勝てません。その都度、人間のおごりを思い知らされます。「自然(大地)の中では人間は生きているのではなく、生かされている一つの生命体に過ぎないということです」

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1.野菜によって施肥方法が異なる

例えば、根菜(大根・にんじん等)は堆肥の量が季節によっても異なり、多くやりすぎると、味が飛び、少なくやると成長不良に陥る。
巻物(白菜・キャベツ等)は完熟肥料を多くと中熟肥料をバランス良くやらないとうまく巻いてくれませんし、美味しいものもできません。

2.畝立てにより水捌けを良くし、水分を切る。

微生物の豊富な土壌は団粒構造(粒子の粗い塊が連なった土)が形成され、水捌けが良く、水持ちが良い。(日本の気候では難しいハーブを育てる際はこのほかほかした土が必要)野菜の成長期には水分が必要ですが、完熟期には水や肥料分を断つことが必要。
畝立てはこのためには欠かせない作業の一つです。

3.中耕・土寄せ作業は土に空気を補充し、根を活性化させる。

除草や土寄せを行う際に畝下の土を起こしてやる作業。この際に追肥が必要な野菜には、米糠・油粕・貝殻・豆殻などを発酵させた窒素分の多く含まれた肥料を施肥します。

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4.虫取り作業

最も難しい季節は、4月から11月初旬頃までで、土中に虫が湧き、蝶や蛾、コオロギなどが芽を食べたり、茎ごと切り倒してしまいます。
この季節は毎日が畑の見回りと除虫作業が農作業に追加されます。
大根は土中に棲む線虫によって4月以降表皮を削られ、一般市場では商品になりません。(勿論当園では遠慮なくお客様にそれを届けますが)このため、一般的農家では、土消毒として農薬をやるのが通常です。

5.除草作業

最もやっかいなのは、こぶし(球根が連鎖)やスギナです。1年もほっておくと、畑はそれらに占拠されることもままあります。このため、よく農家では除草剤を撒き、これらを駆除します。当園の畑作りにはこのこぶし等の除草作業が重労働です。

昔ながらの農法は絶え間ない土作りと野菜に対する愛情が全てであり、おいしい野菜作りは、それらを理解して頂く人達によって支えられており、「むかし野菜」とは、単に有機農法ということではなく、体が美味しいと感じてくれる野菜のことです。

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